EPRと包装 · 欧州

【2026】欧州でビジネスを行うなら知っておきたい「EPR」 — 主要5か国の実務ポイント

欧州の拡大生産者責任は単一の制度ではなく、国ごとの制度の集まりです。そして2026年は、それらが一斉に動いた年です。EUの包装規則が8月12日から適用され、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、英国のいずれもが同じ12か月のうちに自国のルールを変えました。

「What You Need to Know About EPR When Doing Business in Europe」と題したイラスト。フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、英国の国旗、EU旗、分別回収容器と包装を配する

欧州で製品を販売する事業者にとって、EPR(Extended Producer Responsibility、拡大生産者責任)は避けて通れません。複雑そうに見え、罰則の話で身構えてしまいがちですが、実際には、自社にどの手順が当てはまるのかさえ分かれば、順を追って片づけられる制度です。

本稿は2026年8月時点の状況を反映しています。いまはまさに移行の只中です。EUの新しい包装規則PPWRが2026年8月12日から適用され、各国の登録制度と料率もこの1年で次々と更新されました。以下ではまず、多くのEU加盟国に共通する枠組みを整理し、続いて主要5市場——フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、そしてEU域外でありながら越境ECには避けられない英国——の実務ポイントを取り上げます。

EU各国に共通するルール

市場の建物内に並ぶ、紙・プラスチック・金属・ガラス用の4色の分別回収容器
Photo: Pexels

登録先も窓口も加盟国ごとに異なりますが、次の枠組みはその大半に共通します。

1.「生産者」の定義は広い

EPRにおける生産者は、必ずしも製造者ではありません。製品カテゴリーと各国のルールによりますが、一般にはその国の市場に製品を最初に上市する事業者を指します。製造者、輸入者、ブランドオーナー、越境ECの販売者、マーケットプレイスの出品者のいずれもがこれに当たり得ます。

EU域外から直送する事業者は、何を売り、取引をどう組み立て、どこで上市するかによって、あるスキームでは生産者に当たり、別のスキームでは当たりません。この判定がすべての起点で、他のすべてはそこから導かれます。

2. 包装だけの話ではない

包装EPRが最もよく知られていますが、対象範囲は年々広がっています。電気電子機器(WEEE)、電池、そして近年は繊維製品。出発点は、自社の製品カテゴリーが各国でどのスキームを発動させるのかを見極めることであり、登録用紙を眺めるのはその後です。

3. 登録と回収団体への加入は国ごと

一度の登録ですべてを賄えるEU共通の窓口は存在しません。販売する国ごとに、その国の生産者登録簿に登録し、認可された回収団体(PRO、Producer Responsibility Organisation)と契約します。5市場なら5件の登録、そして通常は5本の契約です。

4. 数量報告と費用の支払い

無地の背景に置かれた、蓋を斜めに外したクラフト紙の箱。中に麻の巾着袋、傍らに白いプラスチックチューブ
Photo: Pexels

登録後は、市場に投入した包装材の重量と種類を報告し——年次、四半期など周期は国によります——対応する環境負担金を支払います。近年はエコモジュレーションを導入する国が増えており、包装のリサイクルしやすさに応じて料率が変わります。包装の設計とコンプライアンスのコストは、もはや別々の議論ではありません。

5. EU域外の事業者には多くの場合「授権代表者」が必要

EU内に拠点を持たない事業者は、自社の包装が利用者に届く加盟国ごとに、登録された授権代表者(Authorised Representative)の選任を求められることがあります。PPWR(規則(EU)2025/40)第45条がこれをEU全域の要件としました。同規則は2025年2月11日に発効し、2026年8月12日から適用されます。

ここは注意が要ります。伝えられ方が正確でないからです。欧州委員会はEnvironmental Omnibusの一環として授権代表者の義務を2035年まで停止することを提案しましたが、その提案が対象とするのはEU域内に設立された生産者です。EU域外の生産者は初めから対象ではなく、加盟国はトレーサビリティと執行の観点から、いずれにせよ域外事業者に授権代表者を求めることができます。欧州議会では現在、停止の範囲をさらに絞り、零細・小規模企業に限る方向で議論が進んでおり、委員会採決は2026年10月ごろの見込みです。貴社がEU域外にあるなら、これらのいずれも、2026年8月12日から貴社に適用される内容を変えません。

6. 不遵守の本当のコスト

制裁金はむしろ小さな部分です。実務上の帰結は、マーケットプレイスでの出品停止——Amazon、eBayなどは有効化の前に登録番号を確認します——と、税関での貨物の差止めです。いずれも、罰則通知とは比べものにならない形で売上を止めます。裏を返せばはっきり言えます。登録し、正しく報告していれば、これらのリスクはそもそも生じません。

フランス:CITEO登録とTrimanラベル

青空を背に、公共建築のスレート葺きドームの上でポールに翻るフランス国旗
Photo: Pexels

フランスのEPRは欧州で最も緻密な制度のひとつです。包装についてはCITEO——またはLékoやAdelpheなど他の認可団体——に登録し、対応する費用を支払います。

フランス特有の点が三つあります。

  • IDU(identifiant unique、固有識別番号):回収団体への登録完了後、フランス環境エネルギー管理庁ADEMEが発行する登録番号。マーケットプレイスや取引先から提示を求められます。
  • TrimanとInfo-triの表示は義務:包装には分別情報——Trimanマークと Info-tri パネル——を表示しなければなりません。フランスの消費者向けに作られたもので、他市場の表示を流用することはできません。
  • 対象が事業者向け包装にも拡大:B2B包装を対象とする新たな区分(EPRO)が2026年7月1日に施行され、2026年6月に3つのエコ団体(Citeo Pro、Léko Pro、Twiice)が認可されました。運用開始は2027年1月1日で、対象事業者は2026年末までにエコ団体へ加入することが求められます。

手続は主にフランス語で進むため、英語対応の代行会社を使う外国事業者が少なくありません。有用な第一歩は見た目より限定的です。自社の製品と包装がどの区分に入るかを確定すること——残りの工程はそこから決まります。

ドイツ:LUCID登録とデュアルシステム契約

ベルリンの連邦議会議事堂前に翻るドイツ国旗。アーキトレーブに DEM DEUTSCHEN VOLKE の銘が見える
Photo: Pexels

ドイツの制度は、越境の販売者にはすでに馴染みがあるものです。混同されやすく、しかも互いに代替できない二つの手順から成ります。

  • 「デュアルシステム」(認可された回収・リサイクル事業者)とのライセンス契約。費用は包装の数量に応じて決まります。
  • LUCIDへの登録。中央包装登録機関ZSVRZentrale Stelle Verpackungsregister)が運営する登録簿で、「DE」で始まる登録番号が付与されます。Amazon、eBayなどのマーケットプレイスが出品前にこの番号を要求します。

2026年の変更は構造的なものです。PPWRが2026年8月12日から適用されるのに合わせ、ドイツの国内実施法であるVerpackungsrechts-Durchführungsgesetz(VerpackDG)が同日付で従来のVerpackungsgesetzを引き継ぎます。手帳に書き留めておくべき経過期限が二つあります。新規に登録する事業者は2026年9月12日までに登録を行うことが求められ、すでにLUCIDに登録済みの事業者は2026年11月12日までに登録内容を新要件に合わせる必要があります。LUCIDそのものは存続し、変わるのはその周囲の法的枠組みと執行です。連邦環境省は包装廃棄物制度の概要を英語で公開しています。

スペイン:移行期にある登録制度

曇天の日に上空から望むマドリード中心部の街並みと、その上に翻るスペイン国旗
Photo: Pexels

スペインの包装EPRはReal Decreto 1055/2022に基づきます。枠組みは次のとおりです。

  • 生態移行省MITECOが管理するRegistro de Productores de Producto(生産者登録簿)の包装セクションへの登録。
  • 認可された回収団体——Ecoembesなど——との契約。
  • EU域外の事業者は、現地の授権代表者を選任。
  • 市場に投入した包装の年次申告を、翌年3月31日までに提出。

2026年のスペインが特殊なのは、登録手続そのものがここ数年で作り替えられたため、旧制度を前提に書かれた解説が新制度の解説と並んでいまも流通していることです。両者は容易に混ざります。初めて登録する事業者は、過去期間の申告が残っていると判明することもあります。何かを提出する前に、現地のパートナーと自社の実際の状況を洗い出してください。

PPWRは2026年8月12日からスペインでも直接適用され、既存の国内枠組みと並行して機能します。スペインの実施規定が固まるまでの実務方針は継続です。国内の整備を注視しつつ、Real Decreto 1055/2022への準拠を続けることになります。

イタリア:CONAIへの加入と細かい料率区分

澄んだ青空を背に、ローマのヴィットリアーノ記念堂のかたわらに翻るイタリア国旗
Photo: Pexels

イタリアのEPRは欧州で最も歴史の長い制度のひとつで、1998年から運用され、中心にあるのが全国包装コンソーシアムCONAI(Consorzio Nazionale Imballaggi)です。

  • CONAIへの加入と、素材別の環境負担金Contributo Ambientale CONAI、略してCAC)。素材別コンソーシアムは7つ——プラスチック、紙、ガラス、鉄、アルミ、木材、バイオプラスチック——それぞれに独自の料率体系があります。プラスチック包装の負担金は2026年10月1日からの改定がすでに確定しており、多くのリサイクル区分で料率が引き上げられます。
  • 環境表示は義務:包装に素材と分別区分を表示しなければなりません。
  • 直接登録にはイタリアの税務コードが必要:自社でcodice fiscaleを取得できない事業者は、授権代表者またはEPRサービス提供者を通じて登録します。すでにイタリアのVAT番号をお持ちであれば、この点は通常すでに手当て済みです。VAT側の手続については、イタリアのVATとVIESの登録ガイドをご覧ください。

料率区分が細かいため、負担額はどの区分に入るかで大きく変わります。イタリアでは他国以上に、包装の設計とコンプライアンスのコストが同じひとつの意思決定になるのは、このためです。

英国:EU域外でも、対応は必須

ヴィクトリア朝のれんが造りの建物の壁面から突き出した2本のポールに掲げられたユニオンジャック
Photo: Pexels

英国はEUを離脱しましたが、独自の制度pEPR(Packaging Extended Producer Responsibility)を運用しており、EUとは別に対応が必要です。とくにアジアの販売者にとっては需要の大きい市場で、当社への問い合わせが最も多い国のひとつです。

  • PackUKへの登録:Defraのもとで制度運営を担う機関です。あわせて、該当する地域——イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド——の環境規制当局への登録も行います。手順はGOV.UKのガイダンスに示されています。
  • 料率は段階的に変わります。 初年度(2025年4月〜2026年3月)は、リサイクルのしやすさにかかわらず素材ごとの一律の基本料率でした。2026年4月からは、赤・黄・緑(RAG)のリサイクル可能性評価に応じて料率が調整され、赤評価の包装は基本料率に上乗せ、緑評価は減額となります。2026年は、この仕組みが本格的に動き出す年にあたります。
  • マーケットプレイス経由の販売は、義務主体が運営者側になることがあります。 個々の販売者ではなくオンラインマーケットプレイスが義務主体と扱われる場合があります。どちらの役割に当たるかを、決めつける前に確認してください。
  • 英国pEPRとEUのPPWRは別制度です。 一方への準拠が他方を賄うことはありません。両方に出荷するなら、二つのコンプライアンスを別々に回してください。EU側の情報だけに頼ることが、抜けが生じる最も多い原因です。

大事なのは、手順を踏むこと

欧州のEPRは登録先も手続も国ごとに異なりますが、全体を貫く筋は同じ三段階です。自社が生産者に当たるかを見極め、販売する国ごとに国家登録簿と認可された回収団体に登録し、数量を報告して費用を支払う。

2026年が特異なのは、5市場すべてが同じ1年のうちに動いたことです。フランスは7月に事業者向け包装へ拡大、ドイツは8月にVerpackDGが施行、スペインはPPWRを国内規則と並行運用、イタリアは10月にプラスチックの新料率、英国は4月からリサイクル可能性に基づく評価へ。18か月前に書かれた解説は、間違っているというより古い——そしてそれは気づきにくい種類の問題です。

当社はEPRの登録と申告を、別のベンダーとの関係ではなくVATコンプライアンスの一部として扱います。ひとつのファイル、ひとつのカレンダー、ひとつのチームで、実際に販売している国をカバーします。自社の製品がどのスキームを発動させるのか分からない場合、まさにそこが出発点であり、当社が最初にお答えする問いです。

出典:規則(EU)2025/40(PPWR)、EUR-Lex · 欧州委員会、包装廃棄物 · CITEO · ADEME · ZSVR / LUCID · BMUV、包装廃棄物 · MITECO、Registro de Productores de Producto · CONAI、環境負担金 · PackUK · GOV.UK、pEPRの登録

専門家に相談する

イタリア市場への進出をご検討ですか?

貴社の事業についてお聞かせください。VAT・VIES・保証の手順を貴社のケースに合わせて整理し、通常1営業日以内にご連絡します。