EINとは?米国に恒久的施設(PE)を持たない外国法人のための基礎ガイド
EINは、IRS(米国内国歳入庁)が事業体に割り当てる9桁の納税者番号です。米国に恒久的施設(PE)を持たない外国法人でも、米国との取引の内容によっては取得が必要になります。一方で、米国で売上があるというだけでEINが必要になるわけではありません。
本ガイドは、米国に拠点を持たずに米国と取引を行う、中国や欧州などで設立された企業を対象としています。EINとは何か、どのような場合に必要になるのか、そしてどのように取得するのかを解説します。
実務上の扱いが定まっていない点や、事実関係によって結論が変わる点については、その旨を明記しています。
EINとは?
EIN(Employer Identification Number:雇用者識別番号)は、IRS(米国内国歳入庁)が事業体に割り当てる9桁の納税者番号です(例:12-3456789)。名称に「Employer(雇用者)」とありますが、従業員のいない会社にも発行されます。米国では「Federal Tax ID(連邦納税者番号)」と呼ばれることもあります。
米国の納税者番号(TIN)には主に3種類あり、外国法人が取得するのはEINです。
| 番号 | 対象 | 発行機関 |
|---|---|---|
| SSN(社会保障番号) | 米国市民および就労が認められた個人 | 社会保障局(SSA) |
| ITIN(個人納税者番号) | SSNを取得できない外国人個人など | IRS |
| EIN(雇用者識別番号) | 法人、パートナーシップ、信託などの事業体 | IRS |
押さえておきたいポイントは3つです。
- 外国法人も取得できます。 米国に子会社や支店がなくても、外国法人は自社の名義でEINを申請できます。
- EINを持つことは、米国で課税されることを意味しません。 EINはあくまで識別番号です。米国での申告義務が生じるかどうかは、実際の事業活動と租税条約によって決まります。
- 原則として1事業体につき1つです。 一度発行されたEINは、その後米国での申告義務が生じた場合も引き続き使用します。
PEを持たない外国法人がEINを必要とするのはどのような場合?
PEがなくても、一般にEINが必要になるのは、IRSに申告書を提出しなければならない場合と、米国の支払者に米国の納税者番号を提示しなければならない場合の2つです。主なケースは次のとおりです。
| ケース | EINの要否 | 備考 |
|---|---|---|
| 米国で事業(US trade or business)を行っているが、租税条約上PEがないとして免税を主張する | 原則として必要 | 免税であっても、Form 1120-F(外国法人の申告書)とForm 8833(条約適用の開示)の提出が必要 |
| 米国での活動は課税対象ではないとの立場をとりつつ、念のため「保護的申告」を行う | 必要 | IRSは提出を推奨。提出しないと、後に課税対象と判断された場合に経費控除が認められない。控除を確保するには、原則として申告期限から18か月以内に提出する必要がある |
| 米国で源泉徴収された税金の還付を請求する | 必要 | 還付はForm 1120-Fで請求する |
| Form W-8BEN-Eで配当・利子・使用料などへの条約上の軽減・免除を主張する | 場合による | 本国の納税者番号(中国企業なら統一社会信用コード、欧州企業なら各国の税番号など)を記入すればEINは不要。上場有価証券の配当・利子などは、そもそも不要 |
| 米国子会社やLLCを設立する | 必要(米国の事業体として) | 米国の事業体には親会社とは別にEINが必要。外国法人が100%出資する単一メンバーLLCは、Form 5472の提出のためにEINが必要 |
| 米国で従業員を雇用する | 必要 | 給与の源泉徴収や雇用税の申告に使用 |
| 米国の不動産を売買する(FIRPTA) | 実務上必要 | 源泉税の還付、申告、IRC 897(i)選択などに使用 |
| 米国の個別消費税(Form 720など)の対象となる取引 | 必要 | 特定の業種が該当 |
このほか、米国の銀行口座の開設、決済サービスやマーケットプレイスへの登録、州の売上税(sales tax)の登録の際にEINを求められることもあります。これらは連邦税法上の義務ではなく、取引先の社内方針や州のルールによるため、EINを求められるかどうかはケースによって異なります。州の売上税登録の仕組みについては、米国市場への販売ガイドで解説しています。
ポイント: PE(恒久的施設)と「US trade or business(米国での事業)」は別の概念です。PEがなくても米国で事業を行っていると判断された場合は、租税条約で税額がゼロになるとしても申告が必要であり、その時点でEINが必要になります。
用語集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| Form 1120-F | 外国法人の米国法人所得税申告書 |
| Form 8833 | 租税条約に基づき米国税法と異なる取扱いを主張する場合の開示書類。Form 1120-Fに添付する |
| Form W-8BEN-E | 外国の事業体が米国の支払者に提出する証明書。外国の事業体であることや、源泉徴収に対する条約上の軽減・免除を証明する。IRSには送付しない |
| Form 5472 | 外国資本の米国法人などが、関連者との取引を報告する情報申告書 |
| US trade or business | 米国内で継続的・定期的に事業を行うこと。PEより広い概念 |
| 保護的申告(Protective return) | 課税対象ではないと考えている場合でも、後に課税対象と判断されたときに経費控除の権利を確保するために提出する申告書 |
| FIRPTA | 外国人が米国の不動産を売却する際の源泉徴収などを定める制度 |
| IRC 897(i)選択 | 一定の外国法人が、FIRPTAの適用上、米国法人として扱われることを選択する制度 |
| Form 720 | 燃料や航空輸送など、特定の取引に係る連邦個別消費税の申告書 |
EINが不要なのはどのような場合?見解が分かれる点は?
一般にEINが不要なケース
- 米国での事業も米国源泉所得もない場合。 たとえば、米国に従業員・在庫・代理人を置かず、中国や欧州から米国の顧客に輸出しているだけの会社です。
- 米国源泉所得はあるが、源泉徴収で税金がすべて精算されている場合。 IRSは、米国で事業を行っておらず、税額の全額が源泉徴収されている外国法人にはForm 1120-Fの提出を求めていません。
- 本国(中国、欧州など)で提供したサービスの対価を受け取る場合。 サービスが米国外で提供されていれば、その所得は原則として米国源泉所得に当たらず、源泉徴収の対象にもなりません。
- Form W-8BEN-Eで条約の特典を主張する際に、本国の納税者番号を記入する場合。
見解が分かれる点、事実関係によって結論が変わる点
次の論点には明確な基準がなく、専門家の間でも見解が分かれるか、事実関係によって結論が変わります。
- 米国での活動が「US trade or business」に当たるか。 米国税法はこの用語を明確に定義していないため、活動の継続性や規模など、事実関係を総合して判断されます。たとえば、Amazon FBAのように米国の倉庫に在庫を置いて米国の顧客に販売する場合が該当するかどうかは、見解が分かれています。
- 米国の倉庫や代理人がPEに当たるか。 多くの租税条約では、保管や引渡しのためだけに使用する施設はPEに含まれないとされています。ただし、第三者倉庫の扱いや、代理人が契約締結権限を持つかどうかは、個別の検討が必要です。
- 保護的申告を行うか。 IRSは、課税対象ではないと判断した場合でも申告書を提出すべきとしています。実務家の間では、作成コストとリスクを比較して提出の要否について見解が分かれます。提出にはEINが必要です。
- 州税の扱い。 多くの州は連邦の租税条約に拘束されず、独自の基準(売上高に基づく「経済的ネクサス」など)で州法人所得税や売上税の義務を判断します。連邦レベルでPEがなくても州での登録が必要になる場合があり、その際にEINを求められることがあります。ルールは州によって異なります。
- 支払者(源泉徴収義務者)の実務。 EINのないForm W-8BEN-Eを受け付けるかどうかは、支払者の社内手続きによります。規則上は不要でも、実務上EINを求められることがあります。
EINの取得方法
EINの申請は無料で、申請書はForm SS-4です。米国に住所や主たる事業所を持たない外国法人はIRSのオンライン申請を利用できず、電話、FAX、郵送のいずれかで申請します。
| 方法 | 外国法人の利用 | 発行までの目安 | 連絡先(2026年10月時点) |
|---|---|---|---|
| 電話 | 可(国外の申請者のみ) | 通話中に発行 | +1-267-941-1099(フリーダイヤルではありません)、月〜金、米国東部時間6:00〜23:00 |
| FAX | 可 | 通常4営業日以内 | 米国外から:+1-304-707-9471/米国内から:855-215-1627 |
| 郵送 | 可 | 約4週間 | Internal Revenue Service, Attn: EIN International Operation, Cincinnati, OH 45999 |
| オンライン | 不可 | — | 米国内に住所等があり、責任者がSSN・ITIN・EINを持つ申請者のみ |
FAX番号などは予告なく変更されることがあるため、申請前にIRSの最新の案内を確認してください。
申請の手順
- Form SS-4を記入する。 会社名は定款などの正式書類の表記どおりに記入し、住所には国名を省略せずに記載します。
- 責任者(responsible party)を記入する。 会社を最終的に所有または支配する個人(通常は法定代表者)を記入します。責任者がSSNもITINも持たず、取得資格もない場合は、番号欄(7b行)に「Foreign」または「N/A」と記入します。
- 申請理由を選択する(10行)。 条約の特典を受けることだけが目的で米国での申告義務がない場合、IRSの納税者番号(TIN)の案内ページは、「Other」にチェックを入れ、「For Tax Treaty Purposes Only」や「For W-8BEN Purposes Only」などと記入するよう案内しています。同じページは、該当しない11〜17行には「N/A」と記入するとしています。ただし、Form SS-4の記入要領(2025年12月改訂)は16行と17行(事業内容)を必須としており、両者の記載は一致していません。16行と17行には事業内容を記入しておくほうが安全です。
- 署名して提出する。 国外の申請者の場合、正当な権限を持つ者(部門長など)であれば誰でも署名できます。代理人(第三者指定人)が申請を行う場合は、署名欄の記入が必要です。
- EINを受け取り、通知書を保管する。 電話で申請した場合、IRSの担当者から、署名済みのForm SS-4を24時間以内にFAXまたは郵送するよう求められることがあります。
注意:同じ会社について複数の方法で申請すると、EINが重複して発行されるおそれがあります。申請方法は1つに絞ってください。また、EINの発行は責任者1人につき1日1件に制限されています。
EIN取得後の注意点
- 申告を求めるIRSの通知には速やかに回答する。 条約目的のみでEINを取得した外国法人は、通常、申告義務なしとして登録されます。それでも申告を求める通知を受け取った場合、IRSは申告義務がない旨を速やかに回答するよう案内しています。通知を放置すると、IRSが独自に税額を決定するおそれがあります。
- 変更は60日以内に届け出る。 責任者、住所、所在地の変更はForm 8822-Bで届け出ます。責任者の変更は60日以内に届け出る必要があります。
- 新たなEINを申請しない。 後に米国での申告義務が生じた場合も、新たに申請せず、最初に発行されたEINを引き続き使用します。
- 州で事業登録をする場合は、実質的支配者情報(BOI)の報告を確認する。 2026年8月14日に施行された最終規則により、米国で設立された会社はBOI報告が不要になりました。ただし、米国の州で事業登録をしている外国企業は引き続き報告の対象であり、外国人の実質的支配者を報告しなければなりません。この義務はEINの取得ではなく、州での事業登録によって生じます。
よくある質問
EINを取得すると、米国の法人所得税を納めなければならなくなりますか?
いいえ。EINはあくまで識別番号であり、取得しただけで納税義務が生じることはありません。米国で課税されるかどうかは、事業活動の内容と租税条約によって決まります。
代表者がSSNもITINも持っていなくても申請できますか?
はい。Form SS-4の7b行に「Foreign」または「N/A」と記入します。先にITINを取得する必要はありません。
本国の親会社と米国子会社で同じEINを使えますか?
いいえ。EINは事業体ごとに発行されます。米国子会社やLLCには、それぞれ独自のEINが必要です。
代理人に申請を任せることはできますか?
はい。Form SS-4の「Third Party Designee(第三者指定人)」欄で代理人を指定し、会社の権限ある者が署名します。代理人の権限は、EINが発行された時点で終了します。
取引先からForm W-8BEN-EにEINを記入するよう求められました。取得しなければなりませんか?
規則上は、条約の特典を主張する際に本国の納税者番号を記入すれば、EINは不要な場合があります。ただし、社内の実務としてEINを求める支払者もあるため、取引先に確認し、必要であれば取得を検討してください(「見解が分かれる点」の5を参照)。
Amazonなどのプラットフォームで米国向けに販売しています。EINは必要ですか?
販売の形態によります。中国や欧州から直接発送しているのか、米国の倉庫に在庫を置いているのか、州の売上税登録が必要かどうかによって答えが変わります。米国内に在庫を置くと、US trade or businessやPEに当たるかという見解の分かれる論点が生じます。専門家に事実関係を確認してもらうことをお勧めします。
まとめ
EINは、外国法人が米国の税務手続きに関わる際の入口となる番号です。米国にPEがなくても、条約免税を主張する申告、源泉税の還付、米国子会社の設立、従業員の雇用などの場面で必要になります。一方、米国での活動がなく、源泉徴収で税金がすべて精算されている場合など、不要なケースもあります。
米国で事業を行っているといえるか、保護的申告を行うか、州税がどう適用されるかは、見解が分かれやすい論点です。取引の構造を見直したうえで、EINが必要かどうかを米国の税務専門家に確認することをお勧めします。個別のケースについてご相談をご希望の場合は、お問い合わせください。
参考資料(公式情報)
- Instructions for Form SS-4(IRS)
- Taxpayer identification numbers (TIN)(IRS)
- Instructions for Form W-8BEN-E(IRS)
- Instructions for Form 1120-F(IRS)
- FinCEN Permanently Ends Beneficial Ownership Reporting Requirements(米国財務省、2026年8月11日)
本記事は2026年10月時点の公開情報に基づく一般的な情報であり、個別の税務・法務アドバイスではありません。
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